2006年11月
 最近当院では、接遇向上活動の一環として挨拶の練習を始めています。「お待たせ致しました」「お大事になさって下さい」などの挨拶は実はまだあまり使われていないのですが、正しい挨拶を日頃から練習しておくのはいいことでしょうと思っております。
 挨拶だけに限らず、きれいな言葉遣いというのは仕事の上でも様々な付き合いの上でも要求されるものですが、どうも日本語というのは難しく、自分で自分の言葉遣いに首をひねってしまうことも少なくありません。国が行った調査では、成人の実に約4割の人が「敬語の使い方に自信がない」と回答したそうです。丁寧語に加えて尊敬語、謙譲語とまでくると、どうにもあやふやになってしまいます。「ご相談させて頂きました」「ご注文の品はおそろいになりましたでしょうか」こうした言い回しは果たして正しいのか、間違っているのか、なかなか難問です。
 日本語への関心が一般に高まったのは数年前からでしょうか。テレビの子供番組や深夜番組で日本語を扱ったものが登場していますし、声に出して読むための名文を抜粋した本が人気だそうです。漢字検定も毎年一定の受験者を集めています。子供むけの絵本でも論語や宮沢賢治の文などを取り上げたものがあり、なかなか興味深い内容になっています。古くから多くの人に親しまれてきた文章には、深い味があるということでしょうか。
 医療の世界でも「医師の使う専門用語が分かりにくく、説明を聞いても十分理解できない」「横文字ばかりが多くて、よく覚えられない」という指摘を受けることがあります。医師同士でも専門が違ったりすると、どうもよく分からない言葉にぶつかることがあるくらいですから、人に説明をする際には余程注意して言葉を選ぶ必要があるということでしょう。あまりにも分かりにくい言葉は美しいとは感じられないものです。
 私は言葉遣い以前の問題で、早口で滑舌の悪い話し方が「分かりにくい」とあちこちからお叱りを頂いておりまして、常日頃大変申し訳なく思っております。せめて子供達に絵本を読んでやりながら、ゆっくりはっきりしたきれいな日本語の発音を練習したいと思います。
もみじ11月号 四方山話より