2005年9月
新聞やニュースが盛んに人口減少社会の到来を報じるようになりました。もちろん現代の日本で恐ろしい伝染病が流行したわけでも、飢饉や戦争が起こったわけでもありません。出生率、つまり一人の女性が生涯に産む子供の人数の平均値が減り続けているというのが主な原因だそうです。そういえば、道端や広場で遊んでいる子供達の姿というのは以前より随分減ったように感じます。なぜ子供が減るのか。これは実は日本に限らず先進国に共通の現象らしく、明らかな原因は分らないようですし、様々な要因が複雑に絡み合っているのが実情のようです。諸々の事情で意識的に子供ができるような事態を避けている人もいるでしょうし、なかなか良い出会いや子宝に恵まれず悩んでいる人も少なくありません。現代の中高年以上の方々と、若い人との間では人生設計や男性・女性の役割に対する考え方にも隔たりがあるのかも知れません。それぞれの個人にそれぞれの幸福の形を追究する権利がある以上、一方的な考え方を押しつけるわけにはいきません。ただ、高齢化社会を支えるべき若い労働力が減り続ける事態をどう考えるのか、国民全体に厳しい課題が突きつけられています。子供を産み育てるという営みは母親たる女性一人の問題ではなく、父となる人を始めとした家族、あるいは職場や友人知人、隣近所の人に至るまで大勢が関わることで成り立つものではないでしょうか。育児ノイローゼなんて言葉が頻繁に使われるようになったのも、核家族化や隣近所の付き合いの希薄化と無関係ではないようです。せっかく子供を授かった若いお母さんが育児にあたって孤独や不安に苦しむとしたら悲しいことです。さて、世の中では少子化が進んではいるようですが、杉本クリニックでは職員の家庭に新しい生命が次々に誕生しております。出産に伴って長期の休職に入る者も多く、皆様にはご迷惑をおかけしている点もあるかとお詫び致します。ただ私としては、市内の産婦人科でも評判になるほどの勢いで職員の子供たちが産まれていることをたいへん嬉しく思っております。ささやかではありますが山県の若年人口の増加に貢献して、実は私の家族ももう少し人数を増やそうと画策しているところです。
もみじ9月号 四方山話より