2005年6月

このところ爽やかで過ごしやすい初夏の日が続いておりますが、今年は寒い冬の間より、春になってからの方が風邪やインフルエンザの流行がひどかったように思います。私も5月の後半は風邪を引いておりまして、今までになく長引いて苦しみました。熱と咳で思うように動かない体と頭で、普段簡単にできることができないのを歯がゆく感じながら過ごしておりました。

風邪と比べると怒られるかも知れませんが63日に命日を迎える前院長が、長い長い闘病生活を送っていたことを思い出しました。自身に病を抱えたうえでクリニックを安全に運営するため、父は様々な方々にご協力をお願いしておりました。皆様それによく応えて下さり今日に至るまでしっかりとクリニックを支えて下さっていることは、何にも代え難く感謝しなくてはならないことだと痛感しております。私自身は昨年の春にも気胸で急に入院するはめになり皆様に大変ご迷惑をおかけしましたが、やはり自分に何かあってもクリニックの支障を最小限に留める手だてを打っておくことは、父同様私にも課せられた責務であると考えております。堅苦しい言い方ですが、一種の危機管理ですね。

皆様ご存じの尼崎の鉄道事故では、危機管理や安全管理の重要性が改めて強く思い起こされました。事故の原因については様々に言及されていますが、乗客の利便性をぎりぎりまで追求する姿勢が超過密ダイヤを産み事故の遠因になったのではという指摘もなされています。もっと早く、もっと便利にという欲求はある意味当然でしょうが、それが行き過ぎるとどこかにゆがみが産まれるようです。安売りのお店やコンビニ、自家用車、携帯電話などの普及は確かに生活を便利にしました。しかし便利にはなった世の中ですが、我々はそれだけ幸せになったと言えるのでしょうか。便利さと引き替えに何かを失ってはいないでしょうか。安全、安心とはその中の一つであるように思います。

実は当院では今年の最重要課題に「安全」を掲げています。病院にとって大切な要素は色々ありますが、やはり人の健康状態を最善に保つことがまず第一の使命だと考えるからです。そのためにご協力をお願いすることもあるかとは思いますが、どうかよろしくお願い申し上げます。初夏の一日のように爽やかで穏やかな時が、少しでも皆様に多くあらんことを切に願ってやみません。
もみじ6月号 四方山話より