2005年5月

この文章が皆さんのお手元にわたるときはゴールデンウィークの始めごろでしょうか。仕事の方では今年は長めのお休みをとられる方も多いと聞いております。何かとせわしない年度の終わりと始めの疲れをとる良い機会ではないでしょうか。ところで長いお休みが半分過ぎたとき、「ああ、休みがあと半分しか残っていない」と嘆く人と「お、まだ休みは半分残っている」と考える人と二通りがあるとすれば、皆さんはどちらでしょう。これは世に言う悲観と楽観の違いでしょうが、きまじめとおおざっぱ、几帳面と適当などといろいろな言われ方をするのでどちらがいいのかを簡単に決めるわけにはいきません。けれど長い目でみると「まだ半分あるさ」がなかなか悪くないような気がするのは私だけでしょうか。仕事と遊び、緊張とリラックス、どちらも大切なものですが、身の回りの状況が苦しくなればなるほど、じつは気持ちの余裕や笑顔が大切なように思えます。笑顔とか遊びというものは、不真面目でも手抜きでもなく、いろいろな苦労やストレスに対抗する一つの知恵ともいえるのではないでしょうか。
ユーモアセンスというのは欧米では社会人としてとても重視される資質の一つだそうです。日本ではそこまで言われませんが、すこし目を転じれば狂言に始まり落語、漫才と笑いを尊ぶ文化も脈々と受け継がれていることに気付きます。身近な人の不幸、仕事上のトラブル、対人関係の緊張など、日常のなかにも、真剣に向き合わなくてはならない出来事は少なくありません。そんな時に笑ったり冗談を言ったりしていると「こら、真面目にやれ」と怒られてしまいそうです。笑ったりしてはいけない時というのは確かに存在します。ただピーンと張りつめた空気が、ちょっとした笑いによって緩和されることは時に経験しますし、笑いというものが悲しみから人を救ってくれることもあるように思うのです。物事に対して真摯に取り組むことと、気持ちのゆとりを持つこととは決して矛盾することではないでしょう。
私自身は決してにこやかでも冗談がうまいわけでもないのですが、テレビで漫才やコントをしているとつい見入ってしまいます。クリニックでも毎日様々な事が起きますが、できる限り「まだ半分あるさ」の精神で、様々な人の笑顔のある場所でありたいものです。

もみじ5月号 四方山話より