2005年2月
 暖冬、地球温暖化などと盛んに言われるなかにあっても、やはり冷え込みのつらさを感じる日が続きます。寒い時期には暖かいお風呂に浸かるのが何よりの骨休めという方もおられることでしょう。一言でお風呂とはいいましても、ぬるめのお湯にのんびり浸かるのが好きな人もいれば沸き立つようなお湯でなければ入った気がしないという人まで、湯加減の好みは様々だと思います。
加減と書きましたが「お加減はいかがですか」「医者のさじ加減」など、医療に関わる言い回しの中にはこの言葉が時々顔を出します。薬ひとつとってみても、量が少なすぎて効果がなくても困りますし、多すぎて副作用が出てもいけません。血圧だって高すぎては恐いし低いと体がふらふらしたりする。カリウムの含まれる食べ物も、どれだけ食べても大丈夫かというのは実は個人でかなり違いがあります。加減するというのはなかなか難しいものです。
 更に医療に限らず、日常生活ではどうでしょう。礼儀や挨拶をどこまで丁寧にするか、子供のしつけはどれだけ厳しくするか、隣近所や親戚との付き合いはどのくらいすればいいのか。血圧や血中カリウム濃度のように目標を数字で出したりはできないだけに「どこまで」、「どのくらい」という加減には迷いだせばきりがありません。作法やマナーに関する本や育児書などはありますが本がすべてを教えてくれる訳でなく、身の回りの誰かに聞いても人によって答えが違ったりします。「過ぎたるは猶及ばざるがごとし」という格言が昔からありますが、程のよさをわきまえるには理屈やルールも必要でしょうがもっと大切なのは大人の分別や知恵なのでしょう。こう考えると、加減とは実に奥が深いような気がしてきます。
 「あの先生はいいかげんだよ」なんて言われてしまってはいけませんが、いいかげんも「好い加減」と書けばお風呂のお湯がちょうど入り頃になっているようで、なかなか悪くない感じがしないでしょうか。みんなが気持ちよく浸かれる好い湯加減のクリニックであるよう、少しでも多くの知恵を集めていきたいと考えております。
もみじ2月号 四方山話より