2004年12月

早いもので今年も残りわずかとなりました。そろそろ年賀状の準備を考えておられる方も多いと思いますが、ハガキの替わりに最近は電子メールで新年のご挨拶を下さる方もおられます。「メール?何じゃそりゃ」と思われる方も、子供さん、お孫さんが携帯電話に向かって忙しそうに何やら打ち込んでいる姿を思い出して頂ければ「ああ、あれか」と納得して頂けるでしょう。ここ5年くらいの現象でしょうか、電子メール、携帯メールの普及は目覚ましく、今やこれなくしては仕事にも私生活にも大きく支障を来すという人は多いはず。確かに離れたところにいる自分の知り合いと連絡を取るには、携帯メールというのは手紙を出したり電話したりという手段より簡単で確実です。電車の中でもお店の中でも、話をしたりメールを打ったりと携帯電話の操作に余念のない人の姿は既に見慣れた光景になりました。
さてそれでは知り合いではない、あるいはそれほど親しくはないけれどたまたま近くにいる人はどうでしょう。私の家内が3歳と0歳の子供を連れて近所のスーパーへ買い物に行くと、通りがかりの人やレジで隣に並んだ人が子供に笑いかけてくれたり、「おいくつですか」と家内に話しかけてこられたりするようです。また私たちが住んでいるのが比較的静かな住宅街であるせいか、道を歩いているだけで何となく顔見知りになって挨拶を交わしたり会釈したりという人に出会います。もちろん私も家内もこうした周囲の人たちのメールアドレスはおろか名前さえ分からない場合が多いのですが、こんな何気ないやりとりにも意外と日々の生活を心穏やかに和ませてくれる効用があるようです。
一人で生きていける人などいませんし、知り合い、友人とのつき合い、つながりを重視するのは大切なことだと思います。しかしまた、自分のすぐ傍らの人に思いやりを持ち、心配りのできる人の姿に、はっとさせられることがあります。また家内を持ち出して恐縮ですが、ベビーカーを押してバスや電車に乗ると、大体どこでもさっと手助けをしてくれる人がいるので本当に有難いといつも話しております。ちなみにそういう人には子育てを終えた年配の女性が多いらしく、「小さい子がおると大変よねえ」というようなコメントを残して皆さん去って行かれるそうです。
この一年は私個人にとって本当に色々な出来事があり、日々私の支えとなり助けとなって下さった方々には感謝の気持ちで一杯です。そしてこの文章を読まれることもなく、ふつつかながら私が名前も存じ上げない方々にもまた、ささやかにお礼申し上げたいと思います。

もみじ12月号 四方山話より