至適透析とは?

 読んで字のごとく、適切な透析を「至適透析」といいます。透析に関係する症状や合併症を起こすことなく、本来の体内循環に近い環境が得られて死亡率も低い透析である、ということになります。これは透析のやり方だけでなく、患者さんの栄養管理や透析液やそれに対する生体反応など色々な要素が絡み合ってきます。
 しかし、透析は尿毒素や血液内の物質の除去および調節を主な目的としていますので、透析のやり方に絞って至適透析を考えるときには、物質除去を指標として評価するのが一般的です。
わかりやすい指標として透析前後の尿素窒素、クレアチニンの血中濃度があります。
  正常値 透析前 透析後
BUN(mg/dl) 8〜20 80以下 30以下
Cr(mg/dl) 0.7〜1.1 15以下(男性) 5以下
    12以下(女性)  
透析前後のBUNとCrの指標

この透析前後のBUN、体重などから実際の透析効率、蛋白摂取量が計算できます。蛋白摂取量については栄養指導などに利用します。

Kt/Vで何がわかるのか?

 至適透析の指標のうちで、もっとも広く使われている指標にKt/Vがあります。Kはクリアランス、tは透析時間、Vは尿素分布容積です。簡単に言うと、体重あたりどれくらいの尿素が透析により抜けたのかという指標です。

透析医学会の調査によると
下のグラフは日本透析学会の調査結果で、透析の量が生命予後に与えるリスクをグラフ化したものです。これを見るとKt/Vが1.0〜1.2の患者さんを対照とすると、0.8未満の患者さんでは、1.84倍危険度が高くなり、1.4〜1.6の患者さんでは、危険度が低くなることが分かります。そのため、当院でも毎月このKt/Vを測定して.6以上を目標値としています。
BUN値から知る方法とは?

その他に至適透析の指標をみなさんが簡単に知る方法のひとつに透析前後のBUN(尿素窒素)値の平均値があります。これは(透析前BUN+透析後BUN /2 より計算できます。食事の蛋白摂取量によって値は大きく左右されますがいつも同じものを食べていて、この値が65以上になったら透析不足の可能性があります。

現時点での透析が不十分だと将来いろいろな合併症の原因になったりしますので透析効率をよくすることが大変重要になってきます。したがって一人一人の状態にあわせてその人にあった透析方法をとることが今後重要になってきます。当院は先ほどのBUNの平均値やKt/V値を参考に、至適透析を目指してより患者さん個々にあった透析条件を設定しています。