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機関紙『もみじ』 3月号より
透析アミロイドーシス B

 アミロイドと呼ばれるタンパク質が、全身のさまざまな部位に沈着して、いろいろな症状を引き起こす透析患者さんに特有の疾患です。アミロイドを構成する蛋白にβ2ミクログロブリンがあります。βミクログロブリンは、腎不全になると腎臓での代謝が障害されますし、小さい分子量のタンパク質なので従来の透析療法ではほとんど除去されません。そのため、透析患者さんでは、血液中のβミクログロブリンは正常の20〜40倍にもなります。透析アミロイドーシスは、透析期間が長くなるほど発生しやすくなります。

1.症状

アミロイドが沈着しやすい部分は、腱・骨・関節です。沈着によるしびれや痛み、からだの動かせる範囲が減少すことなどから、日常生活の質(QOL)が著しく低下してしまうことが大きな問題となっています

<部位と症状>

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手首の付け根のところを走る正中神経が圧迫されることで、親指から中指にかけてしびれや痛みがでてきます。ひ どくなると握力の低下、筋肉の萎縮がおこります。(手根管症候群)

A中手指関節の腱鞘炎により、スムーズな指の曲げ伸ばしができなくなる。(バネ指)

B手の付け根の骨(手根骨)、腕の付け根の部分(上腕骨骨頭部)、足の付け根の部分(大腿骨骨頭部)にアミロイ ドが沈着すると、骨嚢胞ができ、骨折を起こしやすくなります。

C肩や股関節では、炎症を起こし、痛みや運動制限がでてきます。

D
首の骨(頚椎)では、骨と骨の間(椎間板)や骨自体がつぶれてしまい、神経を圧迫してしまいます。最初は、痛 みだけですが、進行すると、徐々にしびれや麻痺がでてくることがあります。

これらの症状があったら、先生にすぐ相談して、早期に診断、治療することが大切です。
2.予防と治療

@薬物療法:炎症を抑える薬やステロイド剤が使われます。


A理学療法:関節が固くなり動かなくなることを予防したり、症状の緩和を目的にリハビリテーションや温熱療法、      装具による保護や脊椎の病変に対する牽引治療(病変部を引っ張ることにより、正しい位置に保ったり      圧迫を軽くしたりする)が行われています。

B整形外科的治療:障害の部位に応じて様々な手術が行われ、痛みや機能が改善されます。

C血液浄化療法:発症の予防や、進行をくいとめるには、原因となるβミクログロブリンをできるだけ取り除くこ        とが、基本的な治療となります。そのため、従来の透析膜よりも目のあらい膜を用いて透析を行い        ます。また、透析よりもろ過のほうが、より大きな物質を除去しやすいため、血液濾過透析が行わ        れることもあります。

D腎移植:血液浄化療法の進歩に伴って、βミクログロブリンの除去は以前より大きく改善しましたが、血液中の      βミクログロブリンの濃度が完全に正常化するわけではありません。このため、最も有力な治療法は、     やはり腎移植ということになります。実際、移植後、関節痛などの症状は速やかになくなり、QOLは大     きく改善します。ただし、すでに沈着しているアミロイドがなくなるかどうかは、まだ分かっていません