機関紙『もみじ』 2月号より
腎性骨異栄養症 A
まずは、骨の代謝のお話です。新陳代謝という言葉をよく聞くと思います。これは古い物を捨て新しいものに換えるということです。人間の身体は古くなった細胞を壊し、新しい細胞に置き換える作業を一生繰り返しています。
骨も例外ではなく新陳代謝が行われています。破骨細胞造骨細胞があり、破骨細胞が古くなった骨を溶かし、造骨細胞がその部分に新しい骨を塗る。家のペンキを塗り替えるようなことようなことを行っています。骨を溶かす事と、骨を塗る作業が同じであれば骨の量(骨塩量)は変わらないのですが、骨を溶かす作業が早く、骨を塗る作業がそれより遅い場合、骨の量は減ります。ということは、骨がスカスカになり(線維性骨炎)、重い物を持ったり些細な打撲で容易に折れたり(病的骨折)、気のつかない間に折れてたりすることがあります(自然骨折)。また背骨がつぶれてしまい身長が短くなることもあります(圧迫骨折)。骨折がなくても腰、膝、かかとなどの関節痛が高頻度におこります。これらの代謝作業をつかさどるのが副甲状腺です。
腎不全になると、食事からリンが吸収され、血液中へ過剰に蓄積されると、カルシウムが下がってきます。次に、カルシウムが不足すると副甲状腺ホルモンを出し骨を溶かし血液中のカルシウムを上昇させようとします。
この状態を続けていると、副甲状腺が正常な働きをせずに、常時ホルモンを大量に放出することがあります。ということは、常に骨が溶け続けるということになります。この状態を二次性副甲状腺機能亢進症といいます。
二次性副甲状腺機能亢進症の治療法としては…
@活性型ビタミンD製剤の投与(内服、注射)
A経皮的エタノール注入術【PEIT】 (副甲状腺に針を刺し、エタノールを注射する方法です)
B副甲状腺摘出術(手術で副甲状腺を取ってしまいます) などがあります。
これら方法は、検査データや症状などによって段階的に行われます。
腎性骨異栄養症というものは短期間で起こるものではありません。従って、症状が出てから治療したのでは遅すぎます。日頃から十分意識してカルシウムやリンのバランスをコントロールするように心がけてください。