機関紙『もみじ』12月号より
腎性骨異栄養症 @


 腎性骨異栄養症という字を見るととても難しい病気のように思いますが、皆さんが日ごろから気にしている、カルシウム(Ca)とリン(P)の関係のお話です。腎不全になると腎臓からリンが排泄できないだけでなく、カルシウムを吸収する為に必要なビタミンDを活性化(働ける形にする)ができなくなります。つまり、リンは排泄できない、Caは吸収できないと言った大変な事態に陥ります。大変なといっても生死にかかわるようなことは無いので実感が無いのが現状でしょう。しかし、透析をして510年と経つうちに骨が溶けてしまう、体のいろんな所に石灰化(石ができる)を起こし、日常生活自体に影響を及ぼします。
 今回は、その原因についてお話します。

<原因>


@腎臓では食事中に含まれる吸収されたビタミン
Dを活性化(働ける形)にする作用 があります。働ける形のビタミンDを活性型ビタミンDといいます。

A食事中から吸収された、過剰なリンは尿により排泄されます。

B吸収されたカルシウムは尿により排泄、不足の場合は排泄しないようにコントロー ルします。

C血液中のリンが上昇(溜まってくる)すると、カルシウムが低下します。すると、 副甲状腺ホルモンが多く分泌されます。

 この4つの因子(活性型ビタミンD,リン、カルシウム、副甲状腺ホルモン)がコントロールしあって正常な身体(骨代謝)をつくっているわけです。

 腎臓が悪くなり透析が必要となる前から、徐々にこの4つのバランスが崩れてきています。そのため、透析導入当初から石灰化がみられたり、二次性副甲状腺機能亢進症が始まっていたりするケースもあります。

 腎性骨異栄養症の原因をまとめると
@ビタミンDを活性化できない。(カルシウムの吸収が障害される)

Aカルシウム、リンの濃度を一定にコントロールできない(カルシウム値の低下、リ ン値の上昇)

Bそれに伴い副甲状腺ホルモンが間違った働きをする(副甲状腺ホルモンの過剰分泌 →二次性副甲状腺機能亢進症)

ということになります。
<治療法>


二次副甲状腺機能亢進症の治療法としては、

@活性型ビタミンD製剤の投与(内服、注射)

A経皮的エタノール注入術(副甲状腺に針を刺し、エタノールを注射する方法です)

B副甲状腺摘出術(手術で副甲状腺を取ってしまいます)

があります。これら方法は、検査データーや症状などによって段階的に行われます。
腎性骨異栄養症というものは短期間でおこるものではありません。従って、症状が出てから治療したのでは遅すぎます。

 日頃から十分意識してカルシウムやリンのバランスをコントロールするように心がけてください。